評論

 『アーサー王の死 トマス・マロリーの作品構造と文体』 四宮満 法政大学出版局

あまりにもタイトルが硬いから、とっつきにくい本なのかと思ったらそうでもなかった。至極読みやすい。第2章のあらすじ紹介がコンパクトでツボを押えたものなので、『アーサー王と円卓の騎士』のガイドブックとしてもつかえる。 んで、第2章のあらすじ紹介を…

 『方法序説』 デカルト 岩波文庫

正式タイトルは『理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法の話[序説]。加えて、その方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学』。この中で実践編の屈折光学、気象学、幾何学を除いたのが、この岩波文庫版の『方法序説』。J・J・マックの…

 『黄色い部屋はいかに改装されたか?』 都筑道夫 晶文社

クリスティーの探偵役の一つにハーリィ・クイン氏という人がいまして、この人は相手に過去に起きた恋愛絡みの事件の話をさせ、自分はその人の話に相槌を打つだけで、積極的には何もしない。でも、いつのまにかその話し手自身が自分の力で事件の真相に気づか…

 『シネマ坊主』 松本人志 日経BP社

ああ、面白いな。映画とか興味ないけど、この本は面白い。

 『探偵小説と日本近代』 吉田司雄 青弓社

近代文学の教授さんやら助教授さんやらがかいた探偵小説の評論集。あくまでも文学論のアプローチ方法を採用して、探偵小説を論じているので、ミステリ作家や評論家の書くものとは印象が違う。お馬鹿な私でも何を言いたいのかは大体読みとれる。ただ唯一、第5…

 『妖精の時代』 キャサリン・ブリッグズ 筑摩書房

妖精学の権威として名高いキャサリン・ブリッグズが書いた評論。学者が書いた評論なのだが、堅苦しさはあまり無く、民俗学などには専門外の学生でもスラスラと読める。オベロンやティターニア、マブ女王にパックやエアリアルなど、シェイクスピアの作品に登…

 『水面の星座 水底の宝石』 千街晶之 光文社

こいつも積読本。第4回本格ミステリ大賞受賞ということで読む。章題んとこで、ネタバレしている作品の一覧があるところは好感が持てた。あとクリスティーの『終わりなき夜に生まれつく』をきちんと評価しているのも高ポイント。ただ、カーの『貴婦人として…

 『江戸川乱歩賞と日本のミステリー』 関口苑生 マガジンハウス

昭和20年代の横溝、高木らに代表される〈本格派〉の時代、昭和30年代は松本清張の〈社会派〉の時代、昭和40年代は本格と社会派の融合、昭和50年代は冒険小説やハードボイルドなど多彩なジャンルの多様化、細分化の時代、昭和60年代以降は新本格の時代……。そ…

 『探偵小説論序説』 笠井潔 光文社

第3回本格ミステリ大賞受賞作。 まず『探偵小説の構造』という章では、『形式論』、『役柄論』、『叙述論』などミステリを10個のパーツに分解して詳細に述べている。非常に面白い。ミステリに関してこれほど面白い評論はなかなか読めない。特に『推理論』や…

 『アガサ・クリスティ創作の秘密 欺しの天才』 ロバート・バーナード 秀文インターナショナル

クリスティーの作品が何故売れるのかということをいろいろと考えた評論集。数あるクリスティーの全作品中、最高傑作は『ひらいたトランプ』だと言い切ったり(さらに“回想の殺人”モノとしては『五匹の子豚』が一番だというのもバーナード氏の趣味だろう)し…

 『人生論』 トルストイ 新潮文庫

「あー、人殺しの小説ばっか読んでないで、青少年らしく、たまには文学行こーか、ブンガク。日本人がブンガク気取って本読むんならやっぱロシア文学だよな、ロシアブンガク。トルストイの『戦争と平和』とかタイトルかっこいいな、これ読んでみようか。(古…

 『本格ミステリー宣言』 島田荘司 講談社文庫

司の本を呼んでいたら島田の綾辻や歌野がデビューしたときの推薦文がもう一度読みたくなったのでいまさらだが、本格ミステリー論を読む。歌野や綾辻のデビュー作はそんなにいいもんじゃないとは思うが、島田の推薦文は熱意があって何度読んでも素晴らしいと…

 『アクロイドを殺したのはだれか?』 ピエール・バイヤール 筑摩書房

従来フェアかアンフェアかで議論をなされてきたクリスティーの有名な作品『アクロイド殺し』。本書では「実はポアロ、推理ミスってんじゃねえのか?」と考えたバイヤール氏が執筆した、アクロイドを殺した本当の犯人を指摘する刺激的なミステリの評論。ポア…

 『美少年学入門』中島梓

日本のやおい文化をその黎明期から見てきた中島梓の、JUNEに掲載された評論を収録したもの。やおい文化に免疫が無い人には刺激が強い。何でこんなもんを買っちまったんだ、俺は。しかも何でテスト期間中に読む。著者の文体が気持ち悪い。内容も気持ち悪い。…

 『世界の果てのカレイドスコープ』 野崎六助

ミステリの評論。これをハードカバーで買ったのは失敗だったか。 第1章の西尾維新などの若手に対する意見は、50代のおじさんが最近の若手をどう捉えているかが垣間見えて、結構興味深い。佐藤や舞城を笠井潔の「脱格系」と言う呼称ではなく「ゼロゼロ世代…