『探偵小説論序説』 笠井潔 光文社

 第3回本格ミステリ大賞受賞作。
 まず『探偵小説の構造』という章では、『形式論』、『役柄論』、『叙述論』などミステリを10個のパーツに分解して詳細に述べている。非常に面白い。ミステリに関してこれほど面白い評論はなかなか読めない。特に『推理論』や『読者論』は読んでいてふるえがくる。『モルグ街の殺人』の最大の魅力・『何ヶ国語にも聞こえる金切り声』に触れている箇所とか。しかも笠井潔にしては珍しく、論旨に関係ないことのネタをばらしていない。コレは凄い。笠井潔のミステリの評論集としては過去最高の出来かもしれない。
 で、問題は次の『付論 現象学的小説論』だろう。文学論だかなんだか知らないが、フッサールやらサルトルやらをネタにして笠井センセが熱弁を振るってくれる。しかし、私には正直何を言っているのかよくわからなかった。私がミステリとドクロちゃんにしか興味が無い、社会的落伍者なせいもあるのかもしれないが、「コップが「ある」のか「ない」のか?」で真剣に悩まれても…。現象学っていうのはこういうイタイ学問なのか?
 とりあえず私はモダニズムポストモダニズムにも現象学にも、全く知識も興味も無いので、この章は読んでいてひたすら退屈だった。ミステリの話して下さいよ、笠井センセ。