『アガサ・クリスティ創作の秘密 欺しの天才』 ロバート・バーナード 秀文インターナショナル

 クリスティーの作品が何故売れるのかということをいろいろと考えた評論集。数あるクリスティーの全作品中、最高傑作は『ひらいたトランプ』だと言い切ったり(さらに“回想の殺人”モノとしては『五匹の子豚』が一番だというのもバーナード氏の趣味だろう)しているが、短いけれども内容が充実している本だった。以下私が面白いなと思ったことをダラダラと書いてみようか。


 クリスティーの作品を批判するときに使われる「キャラクターがステレオタイプだ」というのも、逆にそれこそが他の作家と違って彼女の作品が世界中で親しまれる理由だと説く。また彼女の作品は『アーサー王と円卓の騎士』や『ギリシア神話』なんかと同じような“物語”であって、ドフドエフスキーの『罪と罰』に代表される“小説”ではないとバーナードが言っているのが面白かった。


 また付録として巻末にクリスティーの全作品の解説が載っているが、これが本編に負けないくらい読み応えがあった。3、4行ぐらいの短さで、その作品の魅力を伝えるのは難しいと思うのだが、そこはまあ、プロだから、この人は。本当にうまくまとめている。グダグダでダラダラな感想しか書かない私とは大違いだ。