『黄色い部屋はいかに改装されたか?』 都筑道夫 晶文社

 クリスティーの探偵役の一つにハーリィ・クイン氏という人がいまして、この人は相手に過去に起きた恋愛絡みの事件の話をさせ、自分はその人の話に相槌を打つだけで、積極的には何もしない。でも、いつのまにかその話し手自身が自分の力で事件の真相に気づかせるように話を誘導させていくという一風変わった探偵役なんですよ、このクィン氏は。
 このクィン氏のことを「これはチェスタトンのブラウン神父物みたいな話をクリスティーがやりたかったに違いない」というようなことを誰かがどっかで言っていて、いいこというなあと子供心に思っていたんです、昔。が、それを誰が、どんな本で言っていたのかスッパリ忘れとったんですね、私は。
 しかし、今回この本を読んでいたら、第12章の『名探偵がいれば』で都筑の旦那が上記と同じことを言っていて、「ああ、あれはみっちーが言っていたことだったのね」と長年の疑問が氷解したんですよ。
 まあ、何がいいたいかといえばですね、こんなすばらしいことをいう道夫さんを事あるごとに古臭いとかつまらないとか言っていた奴は出てきなさい。先生、怒らないから。