2004-02-01から1ヶ月間の記事一覧

 『恋する伊勢物語』 俵万智

私は中学や高校での古典の授業が大嫌いだったのだが、『伊勢物語』の第9章『東下り』の話は好きだった。厨房だった私は万葉集に収録されている素朴な歌が大嫌いだったので、『伊勢物語』に収録されている枕詞あり、序詞あり掛詞あり、縁語あり、おまけに折句…

 『美女と野獣』 ボーモン夫人

『美女と野獣』に代表される昔話が14篇収録されている。ちょっと説教臭い箇所が多いが(あと知っている話も多いが)、全体的には満足。ファンタジーは性に合うのかもしれない。挿絵に描かれる馬がいい。お伽噺っぽい雰囲気がよく出ている。それにしても世界…

『いざ言問はむ都鳥』 澤木 喬

タイトルに惹かれて買った。植物学者の主人公・沢木敬が四季折々に不思議な出来事に出会うという日常の謎っぽいミステリ。しかしこれはミステリとして読むよりも花にまつわる4つのお話として捉えた方がいいと思う。ミステリとしてはどれも小粒な感じだが,…

 『匣の中の失楽』 竹本健治

一部で4大ミステリとか言われててミステリ野郎の間での評判は高い作品。今まで読む機会が無かったので、春休みを利用して読んでみた。もっと若く、ミステリに夢中だったころに読んでいたら楽しかったかもしれない。今更読んでもなぁという一本。 大体読者は…

 『探偵サイトへようこそ』 徳田央生 

ネットで探偵サイト(ミステリの感想をいいあうのではなくて、現実の殺人事件を推理しあうというサイト)のHPを持つ管理人が殺人事件に巻き込まれるというミステリ。中盤何故かハーレ・クィンロマンスっぽくなる。 あとがき読むと、作者は2ちゃんねるみたい…

 『熱い砂 パリ〜ダカール11000キロ』 岡嶋二人

フランスの首都パリからアフリカの最西端ダカールまでの車のレース・ラリーを体験した著者のエッセイ。バブル期のさなかに書かれたせいか、日本人のおごり、西洋人の傲慢さ、アフリカの町の卑屈さなど読んでいて反吐が出るようなエッセイだった。 私は『世界…

 『アリスの国の殺人』 辻真先

主人公・綿畑克二がアリスたちがいるワンダーランドで起こったチェシャ猫の密室殺猫事件に関わる章と、彼の上司の明野重治郎が殺された事件に関わる章とで構成された傑作ミステリ。 ミステリとしては題名に恥じない出来となっている。とくに287頁のとある人…

 『明日天気にしておくれ』 岡嶋二人

説明の必要が無いほど有名な競馬を舞台にした誘拐ミステリー。トリックに前例があったためと諸般の事情により江戸川乱歩賞は受賞できなかったものの、中身は絶品である。岡嶋二人の作品の魅力は80年代に書かれたものなのに、古臭さを感じないことだ。 例えば…

 『豆腐小僧双六道中〜本朝妖怪盛衰録〜』 京極夏彦

「そんなにお前は妖怪が好きなのか、京極?」という一冊。江戸時代に人気のあった妖怪・豆腐小僧がさまざまな妖怪と出会うというお話。中島敦の『悟浄出世』なんかをイメージしてもらえればわかりやすいと思う。あれみたいに豆腐小僧が「自分という妖怪はい…