『アリスの国の殺人』 辻真先


 主人公・綿畑克二がアリスたちがいるワンダーランドで起こったチェシャ猫の密室殺猫事件に関わる章と、彼の上司の明野重治郎が殺された事件に関わる章とで構成された傑作ミステリ。


 ミステリとしては題名に恥じない出来となっている。とくに287頁のとある人物の独白がすごい。人を殺す動機が「太陽がまぶしいから」と答えたムルソーよりえげつない。あと漫画等に対する作者のオタク認識は1932年生まれとは思えない高レベルなもの。アニメの脚本をやっていた経験もあるせいか、半端な評論家の及ぶレベルではない。さすがはかつて「女性のオナニーシーンを描くアニメーターを主人公にしたミステリ」というわけの分からないものを執筆した作者だけはある。


 変なミステリが読みたい人には、うってつけの1冊なんじゃないだろうか。