『明日天気にしておくれ』 岡嶋二人


 説明の必要が無いほど有名な競馬を舞台にした誘拐ミステリー。トリックに前例があったためと諸般の事情により江戸川乱歩賞は受賞できなかったものの、中身は絶品である。岡嶋二人の作品の魅力は80年代に書かれたものなのに、古臭さを感じないことだ。


 例えば、この本では若者が『マブい』と今では死語となってしまった言葉を使ったり、電話をかけるのに千円札を100円玉に両替して公衆電話を使用するシーンなどがある。が、そういう場面を読んでも私はそれらを古臭いとは思わないのだ。他の国内の作家だとなかなかこうはいかない。まぁ最近の若い人が読んだらどう感じるのかはわからないが。


 それにしても岡嶋二人の本が新刊書店に売っていないのは一体どういうことだ。このレベルなら定価で買っても文句は無いのに、俺が持っている本は全部古本屋で手に入れたものじゃないか、全く。