『黄金流砂』 中津文彦 講談社文庫

 あの岡嶋二人の『焦茶色のパステル』とともに第28回江戸川乱歩賞を受賞した作品。「義経が衣川で死なず、生き延びていた」という義経生存説を絡めつつ、奥州藤原氏三代の黄金財宝を巡る暗号ミステリ。
 暗号のほうは凝っていて非常に出来が良いのだが、殺人事件の方はしょぼい時刻表トリックが使われていたりして(私は時刻表トリックが嫌い)読んでいてきつかった。分量を今の半分にして、殺人事件無しにした方が、私好みの作品になっていたんじゃないだろうか。あとラストのインディー・ジョーンズみたいなのは、確かにバカバカしいけど、まあ、そんな批判するものじゃないだろう。
 また解説で中島河太郎さんが本書のキモである暗号の解読法を思いきりネタバレしている。ネタバレは藤原宰太郎笠井潔でたくさんだよ。