『鬼麿斬人剣』 隆慶一郎 新潮文庫

 師・清麿が不本意にも打ってしまった出来の悪い刀を壊すために諸国を旅してまわる鬼麿。鬼麿の強さはその見切りにある。通常の見切りは斬り込んできた相手の剣先を避けるために、つまり防御のために使うのだが、鬼麿はそれを攻撃に転化させた。刀身、柄、己の手足のリーチを正確に把握し、その範囲内に立ち入ったものは何者であろうと無意識に斬る。人を斬るのは朝飯前、三丈を超す熊をも斬るのだから恐ろしい。そんな彼の前に清麿との因縁をもつ伊賀の隠密たちが立ちふさがる。鬼麿が迫りくる伊賀忍びたちを退けつつ、自分もまた成長していくという痛快なチャンバラ小説。