『新編忠臣蔵(一)』 吉川英治 吉川英治歴史時代文庫

 ストーリーなんざ紹介する必要もないほど有名な忠臣蔵の物語。それでも一応紹介しとくと、浅野内匠頭がなんでか判らんけど突如ブチ切れて吉良上野介に切りかかったからさあ大変。浅野は切腹するわ、家臣・家族は路頭に迷うわ、そのくせ相手方の吉良はお咎め無しだわでやってらんねえやべらんめえって感じで浅野の家臣である大石内蔵助が吉良鄭へ討ち入りをかけるっていうお話。吉川英治の『新編忠臣蔵』は全2巻で、第1巻である本書では大石が京の山科へ隠棲するまでが描かれている。
 んで、この本で一番感動したのが『吉良の氏子』という章で、吉良の領民たちが自分とこのお殿様をかばって立ち上がる場面。「私財を投じて新田を開墾したり、水害を防ぐために堤を築いたりして、ウチんとこの殿様は立派なんだ」ってすっげえ力説するんだよ、こいつら。ここは間違いなく泣ける。浅野が治めていた赤穂藩では暴動が起こったことを考えると、吉良がどんなに領民たちに慕われていたか、それがよくわかる。ここを読むために本書はあるといっても言い過ぎじゃない。