『疑惑の霧』 クリスチアナ・ブランド ハヤカワ文庫

 濃霧の中でおきた殺人事件を扱った話。二人しか人が死なねえ。物足りない。もっと死ねよ。
 フロスト警部を読んだ直後だったせいか、「誰がラウールを殺そうがどうでもいいんじゃい、ボケがっ」などとブツクサブツクサ言いながら読んでいた。ありきたりな尋問シーン、緊迫感のかけらもない法廷シーンと、序盤から中盤まで擁護すべき箇所が特に見当たらない。「コックリル警部とチャールズワース警部、二大名探偵による夢の共演」というのも、ブランドの作品に馴染みのない私にとってはどうでもいいものだった。
 ただ、ラスト3行での作品全てをひっくり返すような仕掛けは上手い。非常に上手い。相変わらず並みのミステリを圧倒している。こういうのをぶちかましてくるから、ブランドの作品は否定することが出来ない。こんなもんをやられたら悔しいが誉めるしかない。
 それにしても訳が読みにくい。非常に読みにくい。誰か何とかしてくれよ。『夜のフロスト』は一日で読めたのに、こいつは3日もかかった。ふざけんな。
 というわけで、この作品の感想を一言でまとめると以下のようなものとなる。


「あいや−、ワタシ、ブランドきらいアルよー、もう読みたくナイねー」