『日本探偵小説全集9 横溝正史集』 横溝正史 創元推理文庫


 『本陣殺人事件』や『獄門島』といった日本ミステリを代表する2つの長編に加え、『悪霊』や『車井戸はなぜ軋る』なんかの4つの中短編を収めた1冊。コレが1000円とちょっとで買えるというのは非常にコストパフォーマンスが高い。
 この全集では『本陣殺人事件』と『獄門島』とに挟まれているため、作品としてはちょっと地味な位置付けの『百日紅の下にて』が、個人的には最も印象深い。何故ならこいつは私がはじめて読んだ横溝正史の作品だからだ。
 この『百日紅の下にて』は「青酸カリをグラスに入れたのは5人の内一体誰なのか?」といった直球ど真ん中なミステリとして読んでも十分に楽しめるんだが、それよりもなによりも、9歳の少女を買ってきて、自分好みの女に育てあげて妻にするというなんとも強烈な個性の佐伯という男に、当時中学生だった私はかなりドギマギさせられたのを覚えている。
 「親にコレ読んでるの知られたらどうしよう?確実にヤバイよ」とかマジに悩んでいたからね。ああ、ホントに懐かしい。今となってはいい思い出だ。