『クレイジー・クレーマー』 黒田研二 JOY NOVELS

 プロローグだけを読んで、「ハイハイまた叙述トリックね、うっぜえなあ、もう」などと考えて、一度は読むのを途中で放棄したのだが、先月大阪大学で行われた講演会がかなり面白かったので、テスト勉強の息抜きとして読んだ本。が、読み始めたら意外に面白かった。
 前半はクレーマーに悩まされっ放しの主人公が面白いし、後半は詳細を書きにくいんだが、これはこれで面白い。講演会で「これを映像化するのは無理だろう」みたいなことを作者本人は言っていたのだが、こういうタイプのミステリとしてはまだ何とかなるんじゃないだろうか、映像化?具体案とかは全く思いつかないけど。
 これまで「叙述トリックのある作品は大嫌いだ」と公言してミス研の仲間に喧嘩を売っていたが意見を変えよう。「“最後でビックリさせるから途中ツマンナイのは我慢してね”と作者が語りかけてくるような叙述トリックのある作品は嫌いだ」という風に。要するに最後だけ面白くて途中がツマンナイ作品は好きじゃないんだよ、俺は。
 さて次はデビュー作の『ウェディング・ドレス』あたりにいきたいんだが、いいかげん文庫化されないのかな?ノベルスを買うのは嫌いなんで文庫本がいいんだけど。