『マークスの山(下)』 高村薫 講談社文庫

 警察組織との軋轢に悩む合田刑事と殺人鬼・マークスとの攻防を描いた長編小説の下巻。
 今までの作品もそうだったが、高村薫の作品は面白いんだけれども読んでいて楽しくない。イメージで言えばワクワクするんだがドキドキしない。多分ぴるぴる分が足りないせいだ。
 合田雄一郎を代表とする警察官達にも存在感は圧倒的にあるのだが、彼らが事件を解決しようが、失敗しようがどうでもいいと考えてしまう。何故かはよく分からない。多分、キャラクターに存在感はあっても魅力がないせいだろう。
 あと、敵役・マークスにあまり怖さを感じないのは何故だろう?これは不思議だ。主人公の合田雄一郎は優秀な警官だというのが、読んでいてバシバシと伝わってくるのだが、それに対してマークスが何をしようとも恐怖を全く感じない。高村薫ほどの描写力があれば、もっと怖い殺人鬼が書けるはずなのに。