『冷えきった街』 仁木悦子 講談社文庫


 9年前に暴漢に襲われて妻を亡くし、アルコール漬けになった探偵・三影潤が、一人の少年との交流をとおして過去の出来事から立ち直っていく物語。チャラい物理トリックがかまされていたりするので、ミステリとしては(゜Д゜)ハァ?な感じだが、男同士の友情譚として読めば非常に出来がいい。
 「ガキが何を言おうと、彼女はもう決して誰にも汚されはしないのだ。」(―本文114頁9行探偵役三影の独白―)と言って少年をぶん殴っていた三影が、ラストではこれ以上無いというぐらい少年の行動を理解している。「おはなし」自体は非常に良い。変なトリックをいれない方がこの作品は楽しめたかもしんない。