『名探偵に薔薇を』 城平京 創元推理文庫

 第1部では陰惨なメルヘンを題材にした毒殺事件を扱ったミステリ。どこまでも都合のいい毒薬や、唐突に登場する名探偵なんかが出てくるので、第1部を読んでいる間は笑っていた。が、第2部を読んだときには、作者がなんでそんなアホなモノを出したのか、全てに納得がいった。第2部では「何故探偵役・瀬川みゆきが事件を解決するのか?」という動機を、念入りに描写している。
 非常に良かった。私は折原一綾辻行人のような叙述トリックが大っ嫌いなので、そういうのに頼らずミステリを書こうとする作者の姿勢には好感が持てる。私が求めているミステリはこういうタイプだ。