『九マイルは遠すぎる』 ハリイ・ケメルマン ハヤカワ文庫

 「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」このあまりにも有名なフレーズを元に謎解きがおこなわれる表題作を含む8篇の短編集。探偵役・ニッキイ教授の法螺話がとても良い。ただ続けて読むと飽きるので、夜寝る前に一話ずつ読むのが一番楽しいかもしれない。
 私の一番のお気に入りは、雪の中から死体が見つかるという『椅子の上の男』。チェスのシーンが非常に良い。この作品に限らないが、伏線が露骨に張られているのにそれでも騙されるというのは(私が鈍いだけかもしれないが)、良いミステリを読む喜びのひとつですな。