『覆面作家の愛の歌』 北村薫 角川文庫

 シリーズ第2弾。ミステリとしてもお話としても、一番出来がいいのは、表題作『覆面作家の愛の歌』だろうか。シェイクスピア好きな役者が出てくるミステリなのだが、電話のトリック(山村美紗が得意そう)を絡めた、上質の恋愛ミステリになっている。
 読んでいて思い出したのだが、私は昔、シェイクスピアに夢中だったころがある。そん時は確か『マクベス』や『オセロー』なんかの4大悲劇よりも、評論家連中には評判の悪い『冬物語』や『テンペスト』なんかの後期ロマンスと言われる、一連のはっちゃけた作品が好きだった(まあシェイクスピアの作品はどれもはっちゃけているが)。妖精とか「時」とかでてくるし。あのイカレ具合は、十分現代でも通用すると思うんだがどうだろうか。おかゆまさきにも負けていないと思う。いや、おかゆの方が勝ってるかな。まあいいや、どっちでも。
 初期のシェイクスピアだったら『じゃじゃ馬ならし』も面白かったな。ヒロインの気が強くて。アレは女性がみたらどう思うんだろう。フェミニストの人は卒倒するんだろうか?