『イリヤの空 UFOの夏 その2』 秋山瑞人 電撃文庫

 素晴らしい。とにかく素晴らしい。主人公とヒロインの初デートや、妹の成長や文化祭などの学校行事でフォークダンスなど今回も見所は多々ある。その中でも、今回は「バナナの皮」について語ることにしよう。
 バナナの皮で滑って転ぶという、一昔前の漫画でしか見たことが無いようなことがこの小説ではおこる。これを指して「最近の若い作家の書くものは…」「こんなものを喜ぶとは最近の若者は…」と呆れて嘆く方がいるかもしれない。
 しかしちょっと待ってもらいたい。あのミステリの女王アガサ・クリスティーも、この「バナナの皮で滑って転ぶ」というのをネタにして短編小説を書いている。『リスタデール卿の謎』に収録されている『黄金の玉』がそれだ。この短編でクリスティーは「バナナの皮」を効果的に使っている。ここまでうまく「バナナの皮」を使った小説を私は知らない。
 ただ残念なことに、本書『イリヤの空 UFOの夏 その2』ではさほど効果的にバナナの皮が使われているわけではない。
 しかし、読んでいる間ずっと「主人公の妹がかわいいなぁ」とくだらないことを考えていたので、今回はそれで感想を書こうとしていたのに、なぜかバナナの皮の話になってしまった。何故だ。