「私本太平記(全8巻)」 吉川英治

 歴代天皇の中でも屈指の迷惑さを誇る後醍醐天皇。その側近の俊英・日野俊基鎌倉幕府を倒すために暗躍すれば、忠臣・楠木正成がそれに応えて赤坂城に立て篭もり、幕府軍を翻弄する。さらにバサラ大名・佐々木道誉は時には宮方、又時には幕府方と不気味に暗躍すれば、それを手玉に取る尊氏の執事・高師直。戦にかけては兄よりも巧みな勇将・足利直義と豪気な性格がすがすがしい大塔宮・護良親王鎌倉幕府を滅ぼした尊氏のライバル凱旋将軍・新田義貞。このアクの強い登場人物たちの中でもその魅力が全くあせることのない希代の英傑・足利尊氏
 東は鎌倉から西は筑紫まで「太平」とは程遠い室町幕府の「乱世」を描ききった吉川英治の一大絵巻。