『思考機械』 ジャック・フットレル ハヤカワ文庫

 科学者にして論理学者にして法学博士にして医学博士、その他自分でも把握できないほどの肩書きをもつオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授。彼は「2足す2は常に4なり」を標榜する。ほんの二、三時間ほどチェスの勉強をしただけでチェスの世界チャンピオンに勝ったことから、この教授についたニックネームが思考機械だ。本書は新聞記者のハッチンスン・ハッチ氏をお供に連れた貧相な小男が活躍する短編ミステリである。ちなみに作者はタイタニック号と共に消えるという派手な死に方をしている。
 この教授は純粋論理を掲げている人なんですけど、その推理法が「この事件の関係者AさんとBさんは一見何の面識も無いように我々には思われる。しかし、Aさんはフランス人でBさんもフランス人だ。だから二人は知り合いだったに違いない。知り合いだから共犯なんだ」というノリなんですけど、すみません、ワタクシ、これに納得することができません。この教授の思考には大胆すぎてついていけません。やはりアレですか、燕や雀のようにちっぽけな私にはこの教授のような偉大な人物の頭の中身を理解することなど不可能なことなんだと、そういうことなんでしょうか。