『黒龍とお茶を』 R・A・マカヴォイ ハヤカワ文庫

 マーサ夫人はドラゴンの生まれ変わりで真実を追い求めていると自称する不思議な老人・ロングとともに、厄介ごとに巻き込まれて失踪した娘・エリザベスを探すそうとするというサスペンス仕立てなモダン・ファンタジイ。
 コンピュータを使って銀行の口座から金を引き出そうとする生臭い犯罪集団が出てくるのだが、にもかかわらずこの小説はなんとも居心地が良い(夢見心地の良い)作品になっている。それは、おそらく、達磨大師に師事し、人間に憧れ、終いには人間になろうと画策するメイランド・ロング氏のキャラクターに負うところが大きいような、そんな気がする。