『治郎吉格子名作短編集(1)』 吉川英治 吉川英治歴史時代文庫

 江戸を追われた盗賊・鼠小僧が惚れた女を助けるため上方で盗みを働くという表題作『治郎吉格子』をはじめとする8編の短編を収録。
 圧巻は『銀河まつり』と題された作品。これは男二人が花火勝負をし、より見事な花火を作った方が意中の女性を手にするというお話。江戸時代後期の当時としては作り出すことのできなかった真紅の色をだすために死体を使用するというその猟奇性もさることながら、ラストの打ち上げ花火のが鮮烈で素晴らしい。陰惨な話なのにカラッとした明るさがある。
 さらに付け加えておくと、『野槌の百』という短編が幼馴染万歳というストーリーで凄く良かったです。