『オズの魔法使い』 ライマン・フランク・ボーム ハヤカワ文庫

 竜巻に巻き込まれたドロシーが、小母さんの待つカンサスの家に帰るため、脳みそのない案山子、心を持たないブリキの木樵り、臆病なライオン、それに愛犬のトトと共にエメラルドの国を旅するファンタジー。“木樵りに脳みそがなかろうと、カカシに心臓がなかろうと、たいした問題じゃないわ”と序盤では冷めた見方をしていたドロシーが、オズの魔法使いを尋ねたり、西の魔女を退治するなど仲間と冒険をしていく過程で少しずつ成長していくというまことに微笑ましい物語。
 ドロシーが竜巻に巻き込まれて異世界へ迷い込むという導入部が実にアメリカらしい。竜巻という天災に馴染みがない日本の作家にはこういう発想はなかなかできないだろうね。