『親友記』 天藤真 創元推理文庫

 天藤真のデビュー作となる『親友記』、大人向けの『なんとなんと』や『夫婦悪日』、少年向けの『誓いの週末』などバラエティに富んだ9編の短編を収録した1冊。一つの短編に複数のアイデアを惜しげもなくブチこんでいる。今のところ天藤真の短編集の中ではこれが一番楽しめた。
 私のお気に入りは誘拐ミステリである『犯罪講師』。犯罪者が聴衆の前で演説をぶつという冒頭の奇抜な設定、人を小馬鹿にしたような誘拐&身代金受け渡しの方法、そんでもって前提条件そのものを覆すラストといい、とにかく楽しめた。たった30頁ほどの作品にここまで詰め込んでしまうのはちょっともったいないような気もするけど。