『桜の園・三人姉妹』 チェーホフ 新潮文庫

 『桜の園』はメガネをかけた家庭教師のシャルロッタ先生が手品をするといった風に、コミカルなキャラが活躍する作品。駄洒落を多用し、恋愛要素を付け加え、読者を飽きさせないようにしている。ただし扱っているテーマは貴族社会の没落&一家離散という非常に重いもの。コミカルなキャラと重いテーマとのギャップがこの作品のウリらしい。
 『三人姉妹』はチェブトイキンというキャラの「みんな、シェイクスピアだ、ヴォルテールだのと言う。……おれは読んじゃいない、てんで読んじゃいないが、読んだみたいな顔をしてやった。ほかの奴らだっておれと同じことさ」という独白に代表される。とにかく他人にいいところをみせようとするダメ人間特有の香ばしさに溢れた一本。他者に認められたい、尊敬されたい、褒められたいという思春期特有のギラついた欲望が登場人物のセリフの端々から感じ取れる。むちゃくちゃイタイ。