『黒田如水』 吉川英治 吉川英治歴史時代文庫

 30歳から36歳までの若かりし頃の黒田如水を描く。
 主君・小寺政職荒木村重の謀略に引っかかり、じめじめとした獄舎に囚われ、人並みの生活を送ることが出来なかった黒田官兵衛。一輪の藤の花がそんな彼の孤独を慰める。この黒田官兵衛の幽閉生活を描いた章が素晴らしい。己の家紋を橘から藤の花に変えたというエピソードでラストを締めくくっているのが、この作品の爽やかさをさらに際立たせている。
 吉川英治歴史時代文庫の『私の吉川英治』のコーナーが、毎回読んでいて楽しい。人によって自分の少年期の吉川英治との読書体験を語っていたり、編集時代の苦労話を聞かせたり、吉川英治の人柄を語っていたりと、内容が多岐に渡っている。全く飽きない。