『真田太平記(三) 上田攻め』 池波正太郎 新潮文庫

 真田信幸は徳川家康重臣・本田忠勝の娘である稲姫を妻に迎え、徳川家との結びつきを強くする。一方真田幸村豊臣秀吉重臣・大谷形部の娘との縁談が進んでいく。こうして真田兄弟の埋めることのできない溝が、少しずつ、しかし決定的に深められていく。
 沼田城を手に入れて喜んでる場合じゃないぞ、昌幸って、こう四百年後に生きている読者としては束の間の幸せを噛みしめている昌幸に思わずつっこんでしまう。
 この巻に収録されているエピソードのひとつひとつが、これからの信幸・幸村兄弟の行末を暗示させるものばかりなので、三巻の時点で既に泣けてくる。この兄弟は小田原攻めが終わって一息入れているこの巻が一番幸せなんだろうね。最終巻を読むのが今から楽しみ。