『死が二人を分かつまで』 ジョン・ディクスン・カー 国書刊行会

 最近ミステリ読んでないので、3ヶ月ぶりにカーを読んだ。カーの作品はオカルティズムや密室トリックに代表される不可能犯罪なんかの要素を無視して読むとかなり面白い。いや、俺はカーはあんま好きな作家じゃないから、こういうこと言うのはアレなんだが。本作でも密室状況下での人殺しが扱われているのだが、別にどうでもいい、そんなもん。
 三人の若者によるありきたりなラブロマンスやら、「ホッホウ」とか叫んでいる頭のイカレタ探偵やら、読者に先を予測させないストーリー展開とか、そういうのが楽しいんですよ、カーは。
 今回一番の見所は、推理している途中で、フェル博士がワウワウと犬の鳴き真似を披露してくれる。ナチュラルにお馬鹿だ、フェル博士。アホな子ほど愛しいと言う言葉はこういう時に使うのだろう。犯人見殺しにするし。
 フェル博士のキャラクターだけでなく、この作品はミステリとしても素晴らしい。密室トリックの方に読者の注意を惹いておいて、実は巧妙な時間差トリックを仕掛けてくるというこの合わせ技。もう無敵だろう、カーは。