『ニーベルンゲンの歌 後編』 相良守峯訳 岩波文庫

 夫であるジーフリトをハゲネに殺されたクリエムヒルトが、ありとあらゆる人間に迷惑をかけ、手段を全く省みず、恨みを晴らすという復讐の物語。
 2万人をたったの2人で撃退する場面があったり、たったの1行で9千人が死んだりと前編の静かな宮廷ドラマに比べれば、後編はかなり激しいストーリー展開をみせる。人がバンバン死ぬので、前編よりは後編の方が私好みだった。
また前編では情けなかったグンテル王が意外に活躍している。それでも猛将・ハゲネや楽師・フォルケール(詩人のくせに騎士よりも強い)の方が戦場では華々しく活躍するので、相変わらず影が薄い。
 多分、このお話で最も可哀想なのはディエートリヒ王だろう。戦を何とか仲裁しようとして右往左往していたら、いつのまにか自分の部下達がどんどん殺されていき、終いには老将・ヒルデブランドと二人だけになってしまうという不幸な王様。つーかさっさと逃げろよ、呑気に戦争見物してないで。
 夫の復讐をなんとしても果たそうとするクリエムヒルトよりも、ハゲネの方が魅力的なキャラクターだ。駄目な王様を助けつつ、必死に戦う姿が健気だ。