『さよなら、ぺとぺとさん』 木村航 ファミ通文庫


【採点表*1
要素点数
ストーリー
サスペンス
ラストの意外性
文体
キャラクター
舞台
小道具
イラスト

  • ストーリー…やはりありきたりだろう。“妖怪とのほのぼのとした学園コメディ”ということで、新鮮味はさほどない。ただ後半の河童妖怪・くぐると主人公のシンゴをめぐるドタバタがお約束ながらも非常に楽しめたので5点ぐらいはつけておこう。
  • サスペンス…終始緊張感はない。良くも悪くもほのぼのとした小説。ただ風呂場の場面で少しドキドキする箇所があったのでそこで+1点して合計6点。
  • ラストの意外性…そんなものはない。全くない。まあ、ラストの意外性を云々する作品でもないだろう。
  • 文体…擬音の使用方法は個人的には大好き。読んでいて非常に楽しい。ただ、“誰のセリフか分からない”あるいは“場面を頭の中でイメージできない”など読みにくい箇所が多々あった。短所長所プラスマイナスゼロということで5点。
  • キャラクター…ぺとぺとさん、こぬりちゃんなど妖怪側のキャラクターは楽しい。ただ、シンゴを代表とする人間側のキャラクターに、も少しインパクトが欲しい。妖怪たちが非常に可愛かったので大甘だが6点をつけた。シンゴやその同級生たち(人間のね)にもっと魅力があったのならさらに上の点数をつけられたのだが…。ちょっと残念。
  • 舞台…基本は学校と主人公・シンゴの家をメインにお話がすすんでいく。舞台設定の魅力はあまりない。4点。また『いもてん』(注:妹との交流を楽しむテーマパーク)というやけくそ気味な舞台設定は加点の材料にも減点の材料にもならない。
  • 小道具…ラジオ体操やスイカ、あるいは夏休みの宿題など夏を感じさせるキーワードを無難だが丁寧に使っている。また妖怪『ぺとぺとさん』の特性の使い方も前作に引き続き、相変らずうまい。
  • イラスト…文句をつける箇所はない。表紙も良い。こぬりちゃんの7変化も良い。次回作があるのなら挿絵は全てカラーイラストで願いたい。次回作への期待を込めて満点から1点ひいて9点。


総評…私は『ぺとぺとさん』はすごい好きですよ。なんかえらそうな採点表作ってますがそれも作品に対する愛のなせる業ですよ。他のどうでもいいミステリとかだったらこんなめんどくさいこと絶対にしませんよ。読み終わってすっごい満足してますよ、俺は。

*1:採点基準…どの要素も持ち点5からスタート。私が気に入った箇所、あるいは気に入らなかった箇所があればそれに応じて加点、あるいは減点していく。最高は10、最低は1の10段階評価。『フランス白粉の謎』の創元推理文庫中島河太郎の解説でふれられているエラリー・クイーンの『探偵小説批判法』を一応参考にしている。