『ヴィクトリア朝妖精物語』 風間賢二編 ちくま文庫

 ディケンズからキプリングまで、19世紀中頃から20世紀初頭までに活躍した14の作家の妖精譚をまとめたもの。まともなファンタジー物もあるが、理屈っぽい王子様とお姫様、ソネットを吟じるドラゴン、魔法の使えない魔女の話など、大半が古き良き時代のフェアリーテイルのパロディになっている。
 私のお気に入りはマギー・ブラウン作の『王様を捜せ―マザーグースの国の冒険』。『不思議の国のアリス』と同様に、おかしな国に迷い込んだちょっと小生意気な少女の冒険譚。『ポケットにライ麦を』や『靴の家に住む老婆』などミステリでお馴染みのマザーグースのキャラ達が大量に出てくるのもこの作品の見所のひとつだが、本書でわたしが最も気に入ったのが挿絵だった。ヒロインは可愛らしく、敵役はおどろおどろしく描かれている魅力的な挿絵が、本文をよりいっそう盛り上げている。(おかゆまさきととりしも氏のイラストみたいに)
 解説を読むとイギリスでフェアリーテイルが流行ったのは、ちょうどミステリが流行った頃と時期的に一致するようなので、その関係について論じた良い評論とか無いのかな?気長に探してみようか。