『泣き声は聞こえない』 シーリア・フレムリン 創元推理文庫

 15歳の小女が妊娠して中絶して家出して様々な人と出会うという話。この作品は最初の設定(15歳、中絶、家出etc.)が秀逸なこと+自己中でありながら他人をなぐさめる事ができる小説家志望の男などの登場キャラがうまく描かれていたので、一気に読めた。ミステリとしては小粒だが、安心して読める佳作。薄さが良い。
 この作品で、私が最も感心したのは「自分のことなど他人は誰も気にしない」という思春期に誰もが持つ、しかし傍から見たらすげえどうでもいい悩みについて、ある答えを出していることだった。どういうものかは読んで判断してもらいたいのだが、あの悩みについて、これほど肯定的な捉え方をする作品はそうはないだろう。
 私は青春小説としても十分楽しめたのだが、これは私のセンスが古いせいだろうか?こんな還暦越えたバアサマの作品でなく、もっと最近の若い子らしく、綿矢りさ佐藤友哉で感動しなきゃダメなんだろうか。ダメなんだろうな。