『繭の夏』 佐々木俊介 創元推理文庫

 引越し先のアパートの天井裏から古ぼけた人形を見つけた並木姉弟。その人形には次のような紙切れが挟まれていた。「ゆきちゃんはじさつしたんじゃない。まおうのばつでしんだんだ」夏休みを利用して、姉弟は過去の眠れる殺人の真相を暴いていく。第六回鮎川哲也賞佳作。
 私が《スリーピング・マーダー物》を読むときに常に気にするのは、探偵役がうっとうしいか否か?ということだ。何の関係も無いキャラたちが、好奇心だけで、殺人事件(しかもすでに終わっている話)に首を突っ込むのはあまり好きではない。「女性セブン」じゃないんだから。惜しいことにこの作品も探偵役の姉弟がうっとうしい。ラストが私好みなので救いがあるが。
 ミステリとしてはいい出来。デビュー作としてはハナマルだろう。解決編で改行無しで2、3頁ぐらい推理を延々と述べてるのには笑った。青春ミステリと紹介されているが、青春モノとしてはそこそこかな。