「私本太平記」 吉川英治

 以前も述べましたが、本書は太平記という題名ですが、内容は裏切りあり、戦争ありで、とても殺伐としています。で、私はニュースで報道される殺人事件やら戦争やらで人が死ぬのを見て大喜びする屑人間なため、人が死にまくる本書は大変楽しかったです。こういうことを他人に打ち明けるのは好きではないのですが、小説のようなフィクションであれ、イラク戦争のようなリアルであろうと、基本的には人が死ぬのは面白いんですよ。違うという意見の人もいるんでしょうが、少なくとも私はそうなんですね。


 で、そこももちろん面白いんですけど、そんな人が死ぬのを面白がる駄目人間の私を喜ばせるために吉川英治は本書を書いたのではなくて、たぶん最終章の黒白問答を描きたかったんですよ、この人は。ラストでは北朝方の足利尊氏の縁者である琵琶法師が平曲を謡い、南朝方の楠木正成の縁者という設定の観阿弥が能を踊るという大変美しいものになってるんです。要するに私は何が言いたいかといいますと、人が大量に死ぬのも面白いけど、敵味方に分かれていた連中が、最後に一緒に音楽をやるシーンはいいなぁと言うことなんです。