『絹靴下殺人事件』 アントニイ・バークリー 晶文社

 駄目だ、楽しめなかった。解決編で探偵役のロジャーが採った、犯人の目前で犯人が行った犯行方法を再現し、犯人に心理的拷問を与えて、そこから自白を引き出すという力技な解決法はアリなのか? 証拠が無いから採用したとはいえ、ちょっとひどすぎるんじゃないだろうか。この方法はリスクが高い割に見返りがあまり期待できないと思うのだが。実験台になった人間が死んでも犯人が全く動揺しない展開も十分に考えられる。というかその展開を事前に考慮しつつ、それでもこの実験を強行してしまうロジャー(小説の登場人物にこんなことを言うのは無粋だとは承知しているんだが)はちょっとおかしいんじゃないか。