『旅の仲間上1』 J・R・R・トールキン 評論社文庫

 せっかくの長期休暇中なので、これまで読みたい読みたいと思いつつ今まで放置してきた『指輪物語』を読み始めることにした。が、序章で早々と挫折した。ホビットについてやら、そのホビットたちが営む社会背景だのの詳細な描写に、どこぞのファンタジーオタクが考えた脳内設定なんざ付き合ってらんねえよと毒づいたりしなかったり。
 で、そのかったるい序章を我慢して乗り越えて本編を読んで、ここで叫ぶわけですよ。「すげえ、トールキンすげえっ!」って。ホビットが指輪を捨てる為に何故旅立たなければならないのか、その経緯を語る際にあのかったるかった序章の内容がこれほど生きてくるとは、トールキンもようやりますわ。
 冒険小説で一番面白いのは別世界へ旅立つときに主人公がこれからの困難に備えて事前に準備をするシーンだと思っているので(『エルマーの冒険』みたいなやつ)、本巻でフロドが村の物達に様々なお別れをする場面で目頭を熱くしたり、ホビット、魔法使い、ドワーフにエルフと読み進むに連れ次々に増える仲間に頼もしさを感じたり。まだ冒険らしい冒険など一切無いけれど、それでも心躍らされるものがあった。