『鬼平犯科帳2』 池波正太郎 文春文庫

 下衆な悪党にはどこまでも厳しく、弱者にはどこまでもやさしく接する長谷川平蔵の生き様を描いたこの犯科帳。
 ここに已むに已まれぬ事情があって罪を犯した人間がいるとしよう。鬼平はその全てを罰するのではなく、一方では罪を許し、もう片一方では罪を許さない、といったように同じ犯罪でもやり手によってその対応を変えている。こういう鬼平の選択眼によって、同程度の犯罪でも裁かれる罪人と裁かれない罪人とがでてくるのだが、この選択眼に鬼平なりの筋が一本通っていて、その一本筋に読者(というか私)が深く共感できるものだから、読み終えた後に実に納得できる。ここいら辺りが鬼平犯科帳の魅力なんだろう。