『6ステイン』 福井晴敏 講談社

 収録作品6作全てが「俺、ダメなんじゃねえの」と思っている人間を励ますだけのお話という、この構成はどうにかならんのか。変化が無えよ。面白いけど。
 一応、気に入ったのは(まあ全部似たような話だけど)『媽媽』かね(媽媽=母親)。工作員・ユイの臨終の際のセリフが、「母上っ」と叫んで死んでいく平清盛(by吉川英治)と同じなのが個人的によかった。そういや、吉川英治はよく『お前の小説は悪人が描けてねえんだよ』と揶揄されたそうだけど、この福井晴敏も全く悪人を描かない作家だねえ。