『徳川家康(3) 朝霧の巻』 山岡荘八 山岡荘八歴史文庫

 二巻のラストが織田信長の父ちゃんの葬式で、この三巻は東海の巨人・今川義元織田信長に討たれた“桶狭間の戦い”で幕を閉じる。タイトルは徳川家康なのに、何故織田信長にそんなスポットライトを当てるんですか、山岡荘八さんは? いや、十分面白いから別にかまわんけどさ。
 今回、印象に残った場面というと、徳川家康が自分の息子が生まれる時に、木刀を「えいっ、えいっ」って素振りして己の不安を紛らわせようとするシーン。いい場面だよね、これ。息子が生まれる期待感と、それに対してどうすることも出来ない家康の無力感がよくあらわれていて凄くいい。
 大学生になるまで時代小説とか全く読んでこなかったから、山岡荘八やら池波正太郎やらは読めば読んだ分だけ新鮮で、すごい嬉しい。ミステリを読み始めた頃の感覚と似ているような気がする。