『悪魔のひじの家』 ジョン・ディクスン・カー 新樹社

 同じことばっか書いていて申し訳ないんだが、カーは殺人事件よりも、ドタバタやロマンスの方が楽しめる。たまたまそういうテイストが強い作品だけを俺が読んでいるだけかもしれないけど。
 この作品でも、他の登場人物達が恋愛や遺産相続などの諸問題に対処しようと必死なのに対して、探偵役を努めるフェル博士は明らかに住んでいる世界が違う。「アテネの執政官、ピーターパンとフック船長、おお、バッカスよ」などと意味不明な言葉を呟き続ける。正木博士の解放治療を受けたほうがいいんじゃなかろうかとツッコミたくなってくるようなナイスなお馬鹿振り。
 これはフェル博士のお馬鹿な言動を愛でるという、そういう作品なんですよ。誰も出入りの出来ない部屋に見え隠れする幽霊の影とか、そういうなんは放っといて、バハハハハハーって高笑いしているフェル博士を愛でるっていう、そういう作品。多分。