『水妖記(ウンディーネ)』 フーケー 岩波文庫

 水に棲む妖精・ウンディーネと騎士・フルブラントとの悲恋を描いた物語。非常に良くある異類婚姻譚物かね。
 ウンディーネの恋人役の騎士・フルトブラントが脳味噌空っぽな野郎で非常にダメ。読んでいて不快。この小説の最大のミスは、この騎士が全く凛々しくないことか。男ならもっといいとこみせろや、このダボが。
 ただし、約束を守らなかった騎士を殺そうとするウンディーネが登場する第18章は最高の出来。148頁での「あの方を涙で殺しました。」とウンディーネが告白するシーンのためだけに、この小説はあるといっても過言ではない。この別れのシーンはとにかく秀逸。
 つくづく恋人役の騎士がちゃらんぽらんなのが悔やまれて仕方が無い。このラストシーンをさらに盛り上げるために、恋人役のフルブラントはもっとかっこいい男の方がいいと思うんだがな。どういう意図があって、ウンディーネの恋人をこんな情けない男にしたんだ、作者のフーケーは。全く理解できん。