『もうひとりのぼくの殺人』 クレイグ・ライス 原書房

 見慣れない列車の中で眼を覚ました青年・ジェフリーは、身に覚えなの無い殺人事件の容疑者として指名手配されているのを知る。事件の謎を解こうとするジェフリーは、偶然出会ったメルヴィル・フェア探偵と行動を共にするが…。『眠りをむさぼりすぎた男』で活躍したメルヴィル・フェアシリーズの2作目。


 物語の導入部分は素晴らしい。自分の意識の無い間に殺人を犯したのではないかと終始疑い続ける青年の焦りが伝わってきて、(使い古されたネタながらも)サスペンスは抜群。
 ただし、ライスの持ち味ともいえるドタバタ劇が、著者の代表作『スイート・ホーム殺人事件』や『大はずれ殺人事件』のようにはじけきっていないため、中盤でちょっとダレテしまう。まあ、結末の意外性は申し分無いので、クレイグ・ライスのファンなら十分に楽しめる。