『亡国のイージス(上)・(下)』 福井晴敏 講談社文庫

 護衛艦いそかぜ》をめぐって交錯する様々な国家・組織・男達の思惑。日本推理作家協会賞日本冒険小説協会大賞大藪春彦賞を受賞した福井晴敏海洋冒険小説
 国語の時間に習う若山牧水の歌に「白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよう」っつーのがあるじゃん。あれを文庫本にして1000頁位に膨らましたのがこの作品。
 「何者にも交わらず、空を飛んでいく白鳥の姿は確かに美しい。だが、やはりそんなのはさびしいんじゃないか、人として生まれた以上、自分とは異質な者とも交わっていかなければあかんのとちがうのか」そう思って「如月行」というキャラクターを福井は考え出したんだと思う。如月行が他者の影響を受けて、少しづつ変化していくのを見るのは非常に楽しい。