『ニーベルンゲンの歌 前編』 相良守峯:訳 岩波文庫

 
 なんとなくファンタジーが、それもコテコテのやつが読みたくなったので、ドイツの『イーリヤス』とも賞賛される本書を読んでみた。しかし、こいつは全然ファンタジーじゃ無かった。少なくとも俺の期待するようなやつじゃなかった。他の部族を討伐したり、嫁さん探しとかしてて英雄譚っぽい趣も一応あることはあるんだが、本書の(少なくとも前編の)メインはドロドロの人間模様。うちの旦那の方が偉いと嫁さん同士でけんかしたりするというメロドラマ。これ。
 剣や魔法の冒険モノを期待していたのに、これはちょっとあてがはずれたか…。いや、これはこれで面白いことは面白いんだが、面白さのベクトルがちょっと違うよ。第1歌章での、これからこのお話で活躍する人物が次々と紹介されていくのを読んで凄く興奮したのにな…、本編がちょっとな。
 あー、登場人物の中ではハゲネが悪賢くて良い。グンテル王を唆すとこなんか、まるでオセローとイアーゴーのやりとりみたいで読んでいて飽きない。
 あとグンテル王とブリュンヒルトの濡れ場があるのにちょっと驚いた。しかも緊縛&放置プレイという高等技だし。
 それにしてもグンテル王は情けない。お前王様ならもっと漢らしくしろよと。こいつはホントに一国を背負って立つ男なのか。後編だともっと活躍すんのか、こいつは?
 まあいい。後編が復讐物ということでちょっと楽しみではある。が、今俺はファンタジーが読みたいので、当分後編は読まないと思う。