『刺青殺人事件』 高木彬光 角川文庫

 ナメクジが漂う異様なバスルームで、死体となって発見された女。死体からは胴体の部分が現場から持ち去られていた。刺青に纏わる世にも奇怪な難事件に名探偵・神津が挑んだ長編ミステリ。


 『本陣』やら『不連続』やらと並んで、戦後初期の密室ミステリとしては名高い本書。
 なんていうか、名探偵が推理を勝手にすすめて行って、『で、そのおはなし自体は面白いけど、肝心の証拠は?』って読者が聞いた時に『ありません、これから犯人に罠を仕掛けますんでダイジョーブ』って答える名探偵は嫌いだ、俺は。碁や将棋の指し方で犯人だって断定されたらやってらんねーよ、正直な話。まあ、クリスティーのポワロも似たようなモンなんだけどね。
 殺人事件自体はいい感じなんだけどね、この作品は神津の推理法がやっぱり気に入らない。