『大あたり殺人事件』 クレイグ・ライス ハヤカワ文庫

 一人さびしく居酒屋で酒を飲むマローンのもとに一人の男がやってくる。彼はマローンの名を呼ぶとその場に倒れ死んでしまった。おなじみのジェーク、ヘレン、マローンのトリオが酒を浴びるほど飲みつつ、謎を解く長編ミステリ。
 あまりにも偶然性に頼る箇所が多いので、前作と比較した場合、ミステリとしての評価は一段劣るかもしれない。しかしそれをカバーできるだけのギャグのキレが本書にはある。殺人事件を扱いつつも冗談を飛ばすのを忘れない三人組+フォン・フラナガン警部達のやりとりが非常に心地好い。前作の『大はずれ』が楽しめた人なら間違いなくこっちもいけるだろう。読んでいて酒が飲みたくなってくる素晴らしい作品だった。