『念力密室! 神麻嗣子の超能力事件簿』 西澤保彦 講談社文庫

 『超能力者問題秘密対策委員会』(略してチョーモンイン)の出張見習い相談員・神麻嗣子が関わった6つの密室事件を描いた短編集。
 近年のチョーモンインシリーズは『転・送・密・室』や『人形幻戯』に代表されるように、キャラクター小説の側面が強くなっているので、私はあまり評価していない。だが、初短編集となる本書は非常に高く買っている。密室をテーマにしながらも『犯人はどうやって密室を構成したのか?』というハウダニットには全くこだわらず(なんせ念力で密室作ってるしね)、『犯人はどうして密室を作ったのか?』というホワイダニットに徹底的にこだわった作品。密室の作成動機をここまで突き詰めたミステリも珍しい。
 ただキャラクター小説としても近年の作品を読むと、あっちこっちに齟齬が出てきているような…。西澤のことだからきっと上手いこと着地させるんだろうけど、ちょっと心配だ。きれいに終わるのかな、このシリーズ。
 あと文庫になって水玉のイラストが新しく書き下ろされているのは嬉しいけど、それなら大百科の方を再録してもらったほうがありがたい。